おすすめGIGAスクールプラン

教職員向け GIGAスクール構想の実現方法

新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、GIGAスクール構想は計画前倒しで整備を求められています。

しかしながら、僅かな補助金で全生徒に1台のPCを配布するにはどうすればいいか、PCを使ってどうすれば業務を効率化できるかの指針がまるでありません。

そこで、GIGAスクール構想の背景を振り返りながら、どうすれば今まで面倒だった作業を効率化できるかを紹介します。

GIGAスクール構想とは

GIGAスクール構想とは、教育現場に最先端のICT教育を取り入れ、PC端末を1人1台保有する環境を構築し、1人1人に最適化した教育を施す、という文部科学省の施策のことです。

PC端末を利用し、統合型公務支援システムやICTの導入を促進し、授業準備や成績処理の負担の軽減なども視野にいれた働き方改革も目的の一つとなります。

参考:文部科学大臣からのメッセージ(GIGAスクール構想の実現について)

教員に求められる教育現場の改革

GIGAスクール構想の中で、教職員様には以下のような改革を行ってもらう必要があります。

オンライン授業の環境構築を行う

GIGAスクール構想によるメリットを最大限に活かすためには、オンライン授業前提で教え方を変えるが必須です。

黒板での板書を前提とした授業ではなく、Power Point や Google Slide を利用したノートを作成する必要があります。

デジタル教材を導入し、児童の学習記録を収集・分析する

PCやタブレットを導入しても、デジタル教材を利用しなければGIGAスクール構想の恩恵は受けれません。

それどころか、機材を持ち運びする子どもたちにとっては負担にしかなりません。

紙の教科書やノートを極力へらし、学習記録をデジタル教材で記録し、保存する。

そういったシステムを構築し、根本から変えていく必要があります。

参考:GIGAスクール構想の実現パッケージ 7ページ目「学校現場におけるICT活用に向けた取組」

教育現場の現状

文科省の調査によると、学校の臨時休業中の家庭学習において、「教科書や紙の教材を活用した家庭学習」を行った割合はなんと100%で、「デジタル教材を活用した家庭学習」はわずか29%でした。

学校の臨時休業中の家庭学習

また、学校外でデジタル機器を利用して宿題を行った割合はわずか3%でした。

OECD:PISA 2018年 ICT活用調査

以上のことからも、デジタル教材を利用した教育環境はまだまだ構築されておらず、これをクリアできなければ黒板を使った集団授業から変わることはできません。

参考:令和2年度補正予算概要説明〜GIGAスクールスクール構想の実現〜

GIGAスクール構想の具体的な実現方法

はじめに

これより、GIGAスクール構想を実現するための具体的な方法を紹介しようと思いますが、その前に軽く自己紹介させてください。

私は現在大手ECサイトでWeb開発を行っているエンジニアです。

私の会社ではGoogle Workspaceを主軸に利用しており、様々なサービスと連携して業務効率化を行っております。

こういった業務効率化のノウハウを踏まえて、具体的にどうすればいいのかを紹介しようと思います。

理想的な学習環境

理想的なオンライン学習環境とは、

  1. ビデオ通話や映像による講義の視聴
  2. ノートPCでの電子教科書の閲覧
  3. タブレット端末による手書きノートの作成

以上3つが揃った状態のことをいいます。

これらが揃えば教員側は自作したスライドを利用することで板書の手間が省けますし、作成したスライドを生徒に配布することで板書する手間が省け、講義のポイントを聞き逃しにくくなります。

また、手書きのできる端末を用意することで、ノート作成はもちろん、数学などのワープロではメモが難しい教科でも対応できるようになります。

反対に、これらの内どれか1つでも欠けると紙やアナログ的手法を利用せざるを得なくなります。

導入コストの問題

GIGAスクール構想における補助金は2つです。

  1. PC端末購入費用への補助金(一台あたり4.5万円の補助)
  2. EdTechソフトウェア 導入補助金(上限200万円の補助)

上記のように、PC購入費用への補助はたった4.5万円しかないため、最低レベルのスペックのPCを買うので精一杯です。iPadなどのタブレットを購入するのはまず無理でしょう。

ちなみに、最低レベルのPCとは、

  • CPU:Celeron
  • メモリ:4GB

のPCのことです。

このスペックのPCでは少し大きなサイズのエクセルを扱うだけでも動作がもっさりし、ときには落ちます。オンラインでビデオ通話しながらの作業はかなり厳しいと思います。

最低限必要なソフトウェア

業務や学習に最低限必要なソフトウェアは Office365 もしくは GoogleWorkspace です。

これらはワープロや表計算、プレゼン用ソフトなど、業務や学習でよく使うソフトがすべて詰まったパッケージで、教育機関で使用する場合は無料となります。

Office365は、WordやExcelなど、日本企業では使い慣れたソフトが含まれていることがメリットですが、クラウド機能を最大限利用して働き方改革を行うならば、断然 Google Workspace をおすすめします。

Google Workspaceをおすすめする理由

Googleのサービス同士を連携できる。

  1. Google フォームで小テストを作成し、学生にGmailで通知。
  2. 学生のGoogleカレンダーに締め切りの予約を入れておきます。
  3. 通知を受け取った学生は小テストを解き、送信ボタンを押下。
  4. 小テストの点数がGoogleスプレッドシートに記録され、集計・保存が完了。

たとえば、学生に小テストの課題を出したいとしましょう。

Google workspaceを使えば、このような自動化が可能になります。

これを使うことで、大幅な業務効率化が見込めます。

Googleカレンダーが非常に優秀。

Googleカレンダーを使えば、ミーティングの調整や課題の締め切りの管理などがスムーズに行えます。

たとえば、教員が自分の今日の予定を時間単位で記入しておけば、空いている時間には自由にミーティングを入れていいというルールを作っておきます。

そうすれば、「この時間にミーティングいれてもよろしいでしょうか」という確認する手間が省けます。

また、Google workspaceoではグループの設定ができるので、1クラスのグループを作成しておけば、課題の締切日をクラス全体カレンダーに登録することで全体に通知する、ということも可能になります。

ドキュメントやスプレッドシートの共同編集が可能。

GoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートではオンライン上で同時に編集が可能です。

なので、ファイル名に日付をいれてどれが最新版どうか分かるようにする、という手間が不要になります。

変更履歴や変更差分も残るため、誤って誰かが修正してしまってもわかるため安心です。

タブレット端末購入の可否

補助金の額から考えると、iPad等のタブレットの購入は難しいです。

そこでおすすめしたいのが 2 in 1 PC です。

これは、ディスプレイを180°開くことができたり、キーボードとディプレイを取り外し可能にしたことで、タブレットとパソコンの両方の機能を備えたPCになります。

これを使えば、タブレットとPC両方の要件を満たすことができます。

しかしながら、低スペックのPCでは書き心地がもっさりしたり、細かい文字が書けないといった問題が生じますが、予算的には仕方ないと思います。

現状、最も手書きに近い書き心地なのはiPadとApple Pencil のセットだけです。

しかしながら、どちらも高価なので補助金額から考えると導入することは難しいでしょう。

PCのOSはどれを選ぶべきか

選択肢は2つ、WindowsかChrome OSです。

学校で利用するなら、おすすめはChrome OSです。

理由は、Googleアカウントでログインするだけで個人の設定がインポートされるので、もしPCを持ってくるのを忘れたりなくしたりしても、余っている端末にログインするだけで利用を開始できるからです。

また、ChromeOSではデータをクラウド上に保存するため、ローカルHDD容量を小さくできるので本体の値段が安い、というメリットがあります。

上記の理由からChrome OSを使ったChromebookの購入をおすすめします。

おすすめのChromebook

では、50000円以内で購入できるおすすめのChromebookを紹介します。

私のオススメはASUSの「Chromebook Detachable CM3」シリーズです。

ASUSはコスパがいいことで有名な台湾の企業で、歴史のある会社です。

このパソコンは教育現場で求められる以下の要件を満たしています。

  • 2 in 1 タイプ(セパレート、コンバーチブル)
  • メモリ:4GB(理想は8GB)
  • CPU:2GHz+2GHz/8コア
  • イヤホンジャックがある
  • 縦置きができる。

公式の商品動画が非常にわかりやすいので、こちらも是非御覧ください。

正直予算50000円であればこのChromebookしかまともな選択肢がないのですが、このノートPCにはいくつか欠点がありますので紹介します。

1.画面が小さい

Chromebook Detachable CM3 の画面サイズはわずか10.5インチですのでタブレットとしては問題ないのですが、ワープロや表計算を使用する場合、やや画面の小ささを感じます。ただ、まだ力の弱い小学生等にとっては、軽いPCの方が適している場合もあるので、大きければいいというわけでもないと思います。

2.反応速度が悪い

パソコンの処理速度に直結するメモリやCPUは値段相応の性能といったところで、ややもっさりした動作になります。

入門者であればタイピングが遅いので気にならないとは思いますが、慣れてくるとちょっと遅延が気になります。

3.HDMIコネクタがない

このChromebookの欠点としては、HDMIコネクタがないことです。

もし、外付けディスプレイに接続したい場合は、Type-cからHDMI端子への変換器が必要になります。

欠点はこのくらいで、教育用端末としては非常に考え抜かれた端末といえます。

良くも悪くも値段相応

いくつかいい点と悪い点を紹介しましたが、この価格帯でここまでユーザーの事を考え抜いたPCは他にはありません。

さすがASUSといったところです。

持ち運びに便利で入門用として考えればかなりコスパのいい商品だと思います。

具体的な学習環境モデル

ここでは ChromebookとGoogle Workspace を使った環境構築モデルを紹介します。

とりあえずオンライン授業モデル

とりあえずオンライン授業プラン

コロナなどの影響により、早急にオンライン授業ができる環境を整えたい人向け。

最低限のオンライン環境を整えることはできますが、業務改善はできず、オンラインとオフライン両方の事務作業を行う必要がでてくる恐れがあります。

さらに、普段の教科書に加えてノートパソコンを持ち運ぶ必要があるため、学生にも負担になりますのでおすすめしませんが、実際はこのモデルになることが多いです。

おすすめGIGAスクールモデル

おすすめGIGAスクールプラン

Google Workspaceを多様し、効率化・自動化した最適なオンライン環境を構築できるモデルです。

ポイントは生徒の重荷となっている教科書を電子化できる点です。

ノートPC1つでは、画面が小さすぎて、電子教科書とビデオ通話によるオンライン講義、この両方を同時に見ることはむずかしいので、自宅にある液晶テレビとノートPCをHDMIケーブルでつなぎ、サブディスプレイとして利用します。そうすることで、オンライン講義を聞きながら教科書をみることが可能になります。

また、教員が作成したGoogle スライドの資料に対して、タブレットを使ってメモ書きしていくような授業スタイルを取ることもできるので、板書をする時間を削減し、重要なポイントを聞き逃しにくくなります。

対面授業の場合は黒板があるので、学生側はHDMIケーブルを家に置いておくだけで事足ります。

理想のGIGAスクールモデル

理想のGIGAスクールプラン

すべて電子化し、完全クラウド化するモデルです。

ノートに書いていた部分を全てiPadで行います。

現状、数式などの細かい文章も容易に書くことができるのはiPadとApple Pencil しかありません。

これらがあれば、今まで紙のノートに書いていた部分も電子化できるため、PDF化してノートを見せる、といったことも可能になります。

Google Workspace を使った業務効率化

課題の作成と採点の効率化

1人1台PCを配布しても、紙で印刷した課題を使ってしまうと効率化はできません。

Google Classroom を使えば、紙の購入費用、印刷費、提出物の管理コスト、採点にかかる時間および人件費、全てなくせます。

たとえば、”テスト付き課題” で問題を作れば、自動採点から正答率のグラフ、提出状況などが一括で管理できる上、成績をスプレッドシートで出力することもできます。

Googleフォーム テスト例
Googleフォーム 正答率グラフ例

業務外指導の効率化

授業以外でも、分からない問題等について質問を受けることがあると思います。

そういった質問を、Google Current や Google Chat でストックしていくことで、同じ内容の質問に対応する時間を削減できます。

Google Currentとは、Googleが提供する掲示板系SNSのことです。

これを使って質問をどんどんストックしていき、検索をかければヒントが得られる仕組みにしていきます。

Google Chat も質問用のチャンネルを作成しておき、そこにストックしておけばいいです。

Workspaceアカウントではメッセージに対してスレッド機能(返信機能)が利用可能ですので、それを使えば質問に対する回答としてストックできます。

出欠確認の効率化

毎朝生徒の出欠確認をとっていることと思います。

出欠を自動化は打刻忘れや機材トラブル等のイレギュラーな事態が多いので、ある程度臨機応変に対応する必要がありますが、Googleフォームを使えば、ほぼ自動化できます。

Googleフォームでは送信時間が記録されるので、打刻した時間も把握できます。

始業時刻の1時間くらい前に打刻フォームを送信し、生徒に回答してもらえば良いでしょう。

懸念点としては、機材トラブルによってフォームアクセスできない場合や、単純に打刻忘れが生じてしまう可能性があるということです。

そういった場合はフォームの補足事項に記入して後から送信してもらえれば良いでしょう。

出欠確認のフォーム例

連絡網の効率化

最近はメールやLINEなどを使って情報を共有することがほとんどだと思いますが、ご家庭の事情によっては電話しか持っていないなど、統一することはなかなか難しいと思います。

また、個人情報保護の観点からも、個人的なアカウントを使いたくない場合もあったり、本当に連絡を確認しているかの把握が難しいといった問題もあります。

Google Workspace ではそれらの問題も解決できます。

まず、Googleグループで生徒のグループと保護者用のグループを作成しておきます。

Google Classroom で連絡網用のグループを作成しておきます。

テスト付き課題としてGoogleフォームで伝えたい内容を作成し、送信したいグループ送信します。

重要な連絡事項は回答数を確認し、必要であれば電話やビデオ通話等で直接既読確認をすると良いかと思います。

基本は生徒が保護者にフォームを見せて、保護者が回答を送信する、という流れを想定していますが、ご家庭によっては保護者に見せるのが難しいこともあるかと思います。

その場合、保護者用のグループに入ってもらい、直接フォームが送信されるようにすることで解決できます。

ただし、保護者用のグループに入っている人の場合グループ内でお互いの連絡先が見えてしまうので、そのあたりの了承が必要です。

連絡網のフォーム例

おわりに

いかがでしたでしょうか。

2 in 1 ノートPCと外付けディスプレイに接続する用のケーブルがあれば、最低限の快適なオンライン授業環境を整えることができます。

また、Google Workspace をフルに使えば、業務効率化がかなり進むかと思います。

GIGAスクール構想を機に、クラウドを活用した業務効率化を行ってみてはいかがでしょうか。

使用したイラスト

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